JIS盤用VCBの保守と更新 (第5回:波及事故と機器寿命)
第5回目の配信「波及事故と機器の寿命」です。
JISキュービクル盤の中に収納されている機器は、当然全てが重要な機器であり各々の期待される寿命には違いがあります。
今回の主要テーマであるVCBは、20年となっています。
変圧器も勿論重要機器であり、20年となっており、他の機器は15年かそれ以下となっています。
但し、メンテナンスも何もしないで、更新推奨時期までの寿命が期待できる訳ではなく、適切なメンテナンス(普通点検、細密点検オーバホール)を行うことが条件となります。
JISキュービクル盤の中の機器は、勿論全て重要な物なのですが、異常が生じた場合の損害の大きさから、多少許される機器と多大な損害を及ぼすため、必ず守らなければいけない機器の両方があります。
下図の電源系統図で、VCBより負荷側の機器は例え、機器自体の寿命が尽き故障することがあっても、箱体内にある主遮断器であるVCBが事故になった機器(回路)を電源から切り離してくれますから、自設備の停電のみという被害になります。
しかし、VCBを含む電源側の機器の寿命が尽きて、異常を生じた場合は、主遮断器が動作したとしても、電源の回路から事故部を切り離すことはできません。
従って、電力会社のVCBが事故の発生回路を遮断することになります。
この場合、電力会社の遮断器の負荷側にある全ての回路が停電となりますので、事故は他の設備に波及することになります。
これが、波及事故であり、他のユーザーから停電に伴う損害賠償が請求されることもありますので、絶対にさけなければなりません。
従って、VCBより電源側の機器(VCBを含む)は、絶対に更新推奨時期を超えて使用することは避けなければなりません。
更新推奨時期を過ぎた製品を使用中にその機器が原因となる波及事故が発生した場合は、原因の如何を問わず、電気管理技術者と、施主は責任を問われることになります。
電気管理技術者は、更新推奨時期を過ぎていることを施主に告げる義務があります。告げていなかった場合は、その全ての責任を取らされることとなります。
今回、VCBの展示は、横向きにして、主回路電源側端子の方向がわかるようにしています。
一般的なJIS盤用としては、左側に展示するように、主回路電源端子が上向きのものがシステム構成上自然な方向となっています。
ここに展示するものは、電源側と負荷側の端子が左右に配列され、RSTの相で言えば、前後方向となっています。
あと、どのメーカー様も同じですが、電源側と負荷側が前後に配列され、RSTが左右のものも使われています。
右側にある、電源側と負荷側が上下に配列され、RSTが左右配列のものは、VCBが複数ある場合に、上下に2段、3段に配列することが容易であるため、用意されていますが、数量的には少なく、JEM盤用として、引出形として構成されて使われている例の方が多いものです。
則武が、日本電機工業会が派遣する講師のメンバーとして、全国各地で、講演活動をしていた際に、電気管理技術者の皆様より、時々質問されましたのは、「電気製品に寿命があり、更新時期があるのは、自分は理解できるが、施主の方は理解できないので、困っている」というもので、その際には、「施主様のご自宅は低圧受電ですから、MCCBや漏電遮断器が旧くなって、故障しても自宅の停電だけで済みますが、高圧受電は、他の需要家様も巻き込む波及事故になり、電力会社より強く責められる点を強調して説明して下さい」と、ご説明していたのを思いだします。
ちなみに則武は、今住んでいる自宅は、建築後13年目で、低圧受電しているMCCBは、12年目で更新時期なのですが、まだ何もしていません。
まずいなとは思っていますが・・・・さすがに、東京電力様は、WHメータについては、知らない内に更新していました。
更新時期を過ぎたWHメータで、測定した電気代については、払わないと主張するユーザへの対策上、WHメーターの更新は必ず実施する必要があるようです。
YouTube動画版「絶縁劣化の真相」VOL.1(第1回~第3回分)が登録されましたので、是非ご覧ください。